ドイツ留学時代の話し【4】「オーケストラピット」

雑感

私が、ドイツ留学時代に暮していたアウグスブルグには歌劇場のオーケストラがありました。
ある日、そのオーケストラの知人から「今度、エキストラのオーディションがあるから 受けてみないか?」という話が来ました。日本では、伝(つて)や紹介でオーケストラのエキストラになることが出来ますが、ドイツでは入団する為のオーディションとほぼ同じような演奏試験を受けないとエキストラになれないのです。
当時、ドイツのオーケストラで仕事をしたいと思っていた私には 願っても無い話で二つ返事でOKしました。そして、幸いな事に10人程受けに来ていたオーディションに一人合格することが出来ました。

エキストラとして、オーケストラの中で弾いてみると、日本のオーケストラとはまるで違うことがわかりました。
どんな曲目でも器用に弾きこなす日本のオーケストラとは違い、ドイツのオーケストラは(特にBクラス以下の)、明らかに得手不得手があって 不得意の曲(イタリアのオペラなど)になると笑ってしまうぐらい下手くそなのですが、お国もの、特にワーグナーのオペラなどはまるで別人ならず別のオーケストラみたいで、日本のオーケストラでは聴いた事が無い鳥肌が立つ様な重い深い響がするのには本当に驚きました。
ドイツの歌劇場には、カンティーネと呼ばれる出演者の為の食堂があって食事はもちろんビールも飲む事が出来ます。今はどうかわかりませんが、当時は本番前やワーグナーの5時間以上になる長いオペラなど長時間出番がない所でカンティーネに飲みに行く奏者も居るという日本では考えられない有り様でした。
一度などは、確か打楽器奏者だったと思いますがカンティーネに行ったまま出番に間に合わず、戻って来た時に指揮者にクビだ!というゼスチァーを受けていました。
まるで、ディズニーの漫画の様な世界が、本番中のオーケストラピットの中で繰り広げられている事に妙に感動したのを覚えています

コメント