ドイツでのヴァイオリンレッスン【2】

バイオリン

ドイツでのバイオリンのレッスンの話をさせていただきます。
私は、1986年の8月に再度ドイツに渡り形ばかりの入学試験を受け、9月から無事エルネ・シェベスチァンのクラスでレッスンを受けられることになりました。
彼のクラスでは、レッスンの時には弟子は全員が出席して一人ずつ皆んなの前で弾く、ということになっていました。そして、全員のレッスンが終わるまで見て聴いていなければならないのでした。
今までその様なレッスンを受けた事がなかった私は、緊張感マックスで皆んなの前へ出ていきました。すると、先生は「君は今日は楽器を弾かなくていい。」と言うのです。私は拍子抜けしてへっ!?と思っていると、先生は更に「楽器は弾かなくていいから、バイオリンはどうやって弾くか言葉で説明してみなさい」と言うのです。
彼が言うには、バイオリンを弾くのは難しい事ではない、というのです。ウソーと思って聞いていると、皆んなどうやって弾くか考えないで弾くから難しくなるんだよ。だからタカオ(私の名前)口で説明しなさい!
私は、困った事になったと思いました。楽器を弾くだけならまだしもヘロヘロのドイツ語で一体どうすればいいんだ、と。仕方なく「えーと、左手にバイオリンを持って、右手には弓を持って・・・こすります。」茶碗と箸じゃあるまいし、ドイツ語もさる事ながら最低の説明だな、と情けなく思って先生の顔を見ると、ニヤニヤ笑っているではありませんか。周りを見てみると、他の弟子達もニヤニヤしています。
私はハッとしました。これは、このクラスの通過儀礼だったんだ、と。他の弟子達も皆んなこれをやられたのに違いありません。ただ、私は外国人なのでドイツ語も格別に可笑しかつたのでしょう。
こうして、トホホな感じで私のレッスンは始まりました。

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