ドイツでのバイオリンのレッスンの話の続きをさせていただきます。
エルネ・セベスチェン先生のクラスでレッスン中の私は、こう問われます。「タカオ、シフティング(左手の位置を指板の低い所から高い所にまたは高い所から低い方に移動させること)はどういう風にするか説明してごらん。」私はとても困りました。何故なら、これこそ私が長い間具体的にどうやって手を動かせば良いかわからなかった事だからです。
私は素直に「わかりません。」と言いました。すると彼は「いいかい、シフティングは手首からやるんだ、決して指から行ってはいけないよ!」そして先生は自ら楽器を手にして「見てごらん、こうやるんだよ。」と言って手本を見せてくれたのです。
それは、とても滑らかで美しい動きでした。それ以来私は毎日この動きを練習する様になりました。
以前は、とにかく気合いでシフティングをしていましたが、その頃に比べると格段に確実性は増したと思います。
先生は、こうも問いました。「じゃあタカオ、ヴィブラートはどうやってかけるのかな?」やったー、これは知っていました。少し得意げに私は「ヴィブラートは腕から、手首から、指での3種類がありますが基本は手首からです。」と答えました。先生は「オー!タカオその通り、凄いじゃないか!」と言ってくれました。周りの弟子たちも「オー、凄え!」とか言っていました。
すると、ドヤ顔の私に先生は「じゃあ、具体的にはどういう風に使うんだい?」と尋ねました。へっ、具体的ってどういう意味?と思いながら仕方なく「わかりません。」と答えました。
彼は「ヴィブラートはいつもかけるんだよ。そして低い音はゆっくりと、高い音は速くかけるんだ。」と言いました。
この話は、確かに子供の頃ヴィブラートを習い始めた時に聞いた様な聞かなかった様な。実は、結構大事な事をちゃんと教わっていたのです。それなのに難しい曲を必死でさらったり、オーケストラの仕事をしたりしてるうちに、すっかり忘れてしまっていたのです。
こうして、持ち上げられたり落とされたりしながらレッスンの日々は続くのでした。
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